交通事故に遭い、後遺障害が認められる方が、自己破産の申し立てを行う場合、後遺障害による慰謝料や逸失利益について、どのように取り扱うのか。

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後遺障害と自己破産

1 設問  
 交通事故に遭い、後遺障害が認められる方(以下「被害者」といいます。)が、自己破産の申立てを行うに至った場合、後遺障害による慰謝料や逸失利益については、どのように取り扱うことになるのでしょうか。

2 前提知識
 設問の被害者には、後遺障害による慰謝料請求権(民法710条)や逸失利益の賠償請求権(民法709条)が発生します。
 しかし、被害者の中には、収入の減少などでローンが払えなくなり、自己破産の申立てを行わざるを得ない方があります。
 自己破産申立てにより、裁判所の破産手続が開始されると、破産手続開始時点で被害者が保有していた一切の(プラス)財産が「破産財団」を構成し、その管理処分権は破産管財人に専属し、最終的に債権者に対する配当金として分配されるのが原則です(破産法34条1項、78条1項)。
 もっとも、例外的に、被害者の「自由財産」と認められたものについては、被害者に管理処分権が残り、債権者に対する配当金として分配されることもありません。
 自由財産には、本来的自由財産と拡張自由財産があります(破産法34条3項4項)。

3 後遺障害による慰謝料請求権について
(1)後遺障害による慰謝料請求権は、本来的自由財産といえるでしょうか。

(2)この点に関する判例として、@名誉侵害を理由とする慰謝料請求権は、加害者が被害者に対し一定額の慰謝料を支払うことを内容とする合意若しくはかかる支払を命ずる債務名義が成立したなどその具体的な金額が当事者間において客観的に確定したとき又は被害者が死亡したときは、行使上の一身専属性を失う、A名誉侵害を理由とする破産者の慰謝料請求権が破産終結決定後に行使上の一身専属性を失った場合には、(旧)破産法283条1項後段の適用はない旨を判示したものがあります(最判昭和58年10月6日)。

(3)この判例は、名誉侵害を理由とする慰謝料請求権に関するものであり、交通事故の後遺障害による慰謝料請求権にその射程が及ぶかについては、争いがあるようです。
  ㋐名誉侵害を理由とする場合も交通事故の後遺障害による場合も、精神的苦痛に対する金銭的評価という点で共通する点を強調すれば、積極説(判例の射程内であると考え、後遺障害による慰謝料請求権は本来的自由財産であるといえるとする立場)に立つことも可能です。
  他方、㋑名誉侵害を理由とする場合と交通事故の後遺障害による場合とでは、慰謝料額算定の事実上の定型化等の差異がある点を協調すれば、消極説(判例の射程外であると考え、後遺障害による慰謝料請求権は本来的自由財産であるとはいえないとする立場)に立つことも可能です。

(4)なお、㋐積極説が採用された場合、破産手続中に当該慰謝料請求権の一身専属性の喪失事由(本項(2)@)が発生したときには、その時点で当該慰謝料請求権は破産財団を構成すると考えられているので、注意が必要です。また、消滅時効(損害及び加害者を知った時から三年)及び除斥期間(不法行為の時から二十年)にも注意しなければなりません(民法724条)。
  他方、㋑消極説が採用された場合は、後述の逸失利益の賠償請求権と同様、自由財産の拡張を検討することとなります。

4 後遺障害による逸失利益の賠償請求権について
(1)後遺障害による逸失利益の賠償請求権については、これを本来的自由財産であるとする議論はないようです。

(2)そこで、後遺障害による逸失利益の賠償請求権については、自由財産の拡張を検討することとなります。
 自由財産拡張については、破産管財人の意見を聴き、被害者の生活の状況、破産手続開始の時において被害者が有していた財産の種類及び額、被害者が収入を得る見込みその他の事情を考慮して、裁判所が判断します(破産法34条4項5項)。
 名古屋地方裁判所などでは、自由財産拡張の目安となる基準を定めていますので、弁護士に相談すると良いと思います。

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